



その理由の一つとして、心療内科を標榜されている90数%は精神科の先生です。
もう一つの理由は、心療内科(学問としては心身医学)のある大学が、80あるわが国の医学部・医科大学のうち、8大学しかなく(そのうち講座があるのは6校で、九州大学、東邦大学、東京大学、関西医科大学、近畿大学、診療科として東北大学、日本大学)多くの医学生と医師は心身医学の講義や実習・研修を受けていません。
心療内科医になるためには…
@内科全般が診れるためのトレーニング
A消化器、循環器、内分泌などの専門医としてのトレーニング
B心身医学(心身相関、心理療法の習得、患者心理の理解、治療的自己の修練ほか)
…の修練が必要です。
京都府・市内で以上の様な心療内科医がいる病院とクリニックは5箇所だけなのが現状です。
身体と心を分けずに全人的医療を行う内科医です。
心療内科医は身体をまず診れる医師でなければなりません。たとえば、心筋梗塞や吐血で来られた患者さんの初期対応ができないと心療内科医ではないわけです。次に、身体と心の関係(心身相関)の病態に焦点を当て診断と治療を行える医師でなければなりません。もともと身体と心を分けることはできないのです。病気になったことだけで私たちは大きなストレスを受けてしまいます。身体と心を分けずに医療を行う内科医が心療内科医だと考えてください。身体と心という二輪車をつなぐ車輪の軸が心身相関です。
心身症の定義は…「心身症とは身体疾患での中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」(日本心身医学会、1991年)となっています。
ここで器質的といいますのは、がんや潰瘍、炎症など現在の医学的検査で異常が認められる病気です。機能的というのは、過敏性腸症候群、びまん性食道けいれん、片頭痛など、MRI,CT,レントゲン検査などの器質的検査では異常を認めませんが、明らかに一つの器官の働き(機能的)の乱れによって起こる病気のことを言います。米国では医療機関を受診する患者さんの70%は機能的疾患であるといわれています。最近では世界的に表1のように機能性身体症候群と呼ばれています。
身体疾患に伴ううつ状態や身体症状を主症状とするうつ状態は心療内科で心身両面より診ますが、精神症状が中心のうつ病や神経症、不眠症などは精神科が専門であるということを理解しておいてください。もちろん不登校はカウンセラーが専門になります。
(1)呼吸器系 | 気管支喘息、過換気症候群、神経性咳嗽ほか |
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(2)消化器系 | 胃・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia FD)、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、慢性膵炎、胆道ジスキネジー、機能性嘔吐、びまん性食道痙攣、食道アカラシア、空気嚥下症ほか |
(3)循環器系 | 本態性高血圧症、本態性低血圧症、起立性低血圧症、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、一部の不整脈、レイノー病ほか |
(4)内分泌・ |
甲状腺機能亢進症、摂食障害、愛情遮断性小人症、心因性多飲症、単純性肥満症、糖尿病、反応性低血糖ほか |
(5)神経・ |
緊張型頭痛、片頭痛、痙性斜頸、書痙、眼瞼痙攣、慢性疼痛など |
(6)泌尿・ |
夜尿症、神経性頻尿、心因性尿閉、心因性インポテンスほか |
(7)他科 | 関節リウマチ、線維筋痛症、慢性疼痛(腰痛症)、外傷性頸部症候群、頻回手術症、腹部手術後愁訴、更年期障害、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、メニエール症候群、顎関節症、舌痛症など |
◇消化器科 | 過敏性腸症候群、機能性胃腸症 |
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◇婦人科 | 月経前症候群、慢性骨盤痛 |
◇膠原病科 | 線維筋痛症 |
◇循環器科 | 非心臓性胸痛 |
◇呼吸器科 | 過換気症候群、習慣性咳嗽、喉頭機能異常症 |
◇感染症科 | 慢性疲労症候群 |
◇神経内科 | 緊張型頭痛 |
◇歯科口腔科 | 顎関節症 |
◇耳鼻咽喉科 | 咽喉頭異常感症、めまい症、耳鳴 |
◇アレルギー科 | 化学物質過敏症、慢性蕁麻疹 |
Wessely wt al. Lancet 1999
下記に挙げておきます。
心療内科は横断的な科なので、各科からの紹介受診があります。紹介の最も多い科は整形外科・ペインクリニック科からの慢性疼痛(腰痛、背部痛、線維筋痛症ほか)患者さんです。
1.消化器疾患 | 機能性胃腸症、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、慢性膵炎、食道アカラシア、びまん性食道けいれん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍 |
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2.慢性疼痛 | 各科の腹痛、頭痛、腰痛、胸痛などの慢性に続く痛み、 線維筋痛症 |
3.各科のがん | サイコオンコロジ−(精神腫瘍学)に基づくがん患者さんの治療やケア |
4.アレルギー疾患 | 難治性気管支喘息、アトピー性皮膚炎、慢性じんましん |
5.循環器疾患 | 原因不明の胸痛や動悸、動揺性高血圧症、発作性頻拍症、ストレスが関与する虚血性心疾患 |
6.内分泌疾患 | コントロ−ルの難しい糖尿病、甲状腺機能亢進症、肥満症 |
7.神経系疾患 | 片頭痛、緊張型頭痛、痙性斜頚、書痙、めまい症など |
8.慢性疲労症候群、線維筋痛症などの機能性身体症候群 |
どのように違うのでしょうか
内 科 |
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内科領域の身体疾患を身体面から医療を行います。 |
心療内科 |
内科領域、各科領域の身体疾患を心身両面から医療を行います。 どのような病気を診るかは表を見てください。心身医療が各科で行われるようになれば、心療内科は内科領域だけということになりますが。 |
精神科 |
精神疾患を精神面より医療を行う科です。 精神疾患は多岐にわたります。統合失調症(精神分裂病)、躁うつ病、うつ病、各神経症(不安障害、社会恐怖、強迫性障害など)、不眠症、てんかん、アルコ−ルなどの薬物依存、せん妄、痴呆、健忘、人格障害、そのほか多岐にわたります。 |
神経内科 |
神経内科は脳神経系の器質的な病気を診る科です。 (精神科が脳の機能異常を診るのに対して) その中でも内科で医療できる病気です(外科で医療しなければならない場合は脳神経外科です)。わかりやすく言いますと、脳神経系が炎症や変性などにより物理的に障害された病気を診るわけです。たとえば、パーキンソン病、脳梗塞、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、進行性筋ジストロフィー、三叉神経痛などの病気です。 |
初診、再来すべて予約制になっています。できるだけかかりつけの先生の紹介状を持参ください(予約電話番号:075-381-5166)。初診での診察は一人約1時間かけて行います。診察の前に心理士による面接(約30分)を行い、次に簡単な健康調査票を記入していただきます。それから診察に入ります。心療内科の診察は内科と同じく問診・診察・検査に面接(一般心理療法)が加わります。
内科的な治療に心療内科の一般的な治療(自律訓練法、行動療法、認知行動療法、システムズアプロ−チ、薬物療法ほか)を行います。また、医師の指導と指示のもと、臨床心理士によるカウンセリングも行っています。
エッセイ
心療内科をはじめて受診されるあなた。抵抗はありませんか?
受診後に多い患者さんの感想です。「まったく心療内科を誤解していました」、「こんなに丁寧に身体のすみずみまで診察してもらったのは初めて」、「こんな医療を全科の先生がされると素晴らしいのに」。
心療内科は「からだの病気」を「からだ」と「こころ」を分けずに全人的医療を行う内科医なのです。疾患ではなく、病気をもち悩み苦しむあなたに接して医療を行う科ですから安心して受診してくださいね。心療内科があるのは日本とドイツだけなのです。わが国に心療内科の講座があるのは6つの大学(診療科をいれますと8つです)だけです。
◎中井吉英の紹介
◆弘正会西京都病院 名誉院長・心療内科部長
◆関西医科大学名誉教授(心療内科学)、日本心療内科学会理事長、日本心身医学学会前理事長、日本慢性疼痛学会理事歴任、日本疼痛学会理事歴任、日本高齢者消化器病学会理事歴任ほか
◆心療内科全般、消化器疾患・慢性疼痛・生活習慣病の心療内科的アプロ−チ
◆日本心療内科学会専門医、日本心身医学学会専門医、日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医
◎山本和美の紹介
◆弘正会西京都病院 臨床心理士
◆医学博士、日本臨床心理士資格認定協会認定 臨床心理士
◆前関西医大心療内科学講座心理部門チーフ、大阪スクールカウンセラー、医科大学および看護学校学生相談、留学生相談
◆所属学会:日本臨床心理学会、日本心身医学会、人間性心理学会、包括システムによるロールシャッハ学会、国際ロールシャッハ学会、国際慢性疼痛学会